
- 生野菜をまるごと使う
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うちのソースの第一の特長は、生野菜から作るということですね。そのこだわりの一番の理由は「風味」です。現在、一般的に量販されているソースは、野菜のペーストやパウダーが使われています。原料を長期保存できて常に品質・味が安定するということが利点なのですが、特に「品質の安定性」というのは、食品においては非常に重要なんですね。
でも実は、パウダーやペーストは加工段階からすでに何度にも加熱されることで、繊細な風味は飛んでしまうんです。うちのソースは祖父の頃からのレシピで、当時の工場設備からいえば必然的なアナログな方法だったんですが、これって加熱のプロセスは最小限。結果的には理にかなっていたというわけです。とはいえ、生野菜を使うのは確かにリスキーです。厳密に調べたら、うちのソースは季節によって味が違っているかもしれません。でも、たとえ味が違っていたとしても、その理由がきちんとわかれば消費者の方は理解してくださる。特に、ナチュラル嗜好の現代では受け入れられやすいのでは、とも感じています。「周回遅れが先頭をとる」的な感覚でしょうか。
- 自家醸造酢と木桶が味のかなめ
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数ある原材料のなかでも「酢」は、味としても防腐剤としてもウスターソースのキメ手だと思います。この酸味が抜けてしまったら味的には腰砕けですし、長期にわたって常温の木桶で寝かせておいてもソースが腐らないのはお酢がベースだからです。地元酒蔵の吟醸酒粕を使い、日々、発酵の状態を私たち自身で確かめながら自家醸造しています。
また、ウスターソースを寝かす「木桶」は、もっとも古いものは創業の頃、祖父が酒蔵から譲ってもらったもので約 95年目、今でも使えますよ。何年、何十年使ってきた木桶で熟成することで、ステンレスやプラスチックなどではできないまろやかさが生まれ、素材や季節による味のばらつきも慣らされていきます。ここでできあがったウスターソースが、中濃ソースなど、定番ソースのベースになっていきます。