
- 店名がご自身のお名前とは!
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いきなりで恐縮ですが、「裕土」と書いて「ひろのり」さんとお読みするんですね。珍しい読み方で、とても素敵なお名前ですね。
ありがとうございます。これは実家の奈良県で、両親が近所の神社の神主さんにお願いして付けていただいた名前らしいんですが。実は、この店の名前にもなっているんです。「裕」という文字は、豊かで満ち足りているという意味で、フランス語で「リシュ」。「土」は大地という意味の「テール」…で「リシュテール」なんです。
- 海と食に恵まれた豊かな地へ
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ふるさとの奈良も、ここ伊勢も、神様がおいでになる豊かな地。お名前の持つ力に導かれてこちらにいらしたような気がしますね。
この店をオープンしたのは、2012年2月です。それ以前、「ホテルオークラ神戸」に勤めていた当時、鳥羽の「タラサ志摩」というホテルの立ち上げだけ手伝ってほしい、と恩師から頼まれて。最初は一時的なつもりだったんですが、来てみたらすばらしく良い土地で、そのまま居ついてしまったという感じでした。その後、一旦「タラサ志摩」は離れましたが、店を構えるにあたって候補地を考えたとき、やはりこの辺りがいいなと。海のない場所(ご出身は奈良県吉野町)で育ったので、海のある地への憧れもありましたね。
お店のすぐそばの神宮外宮に祀られている「豊受大御神」は食を司る神様ですし、伊勢は食材も豊かな地ですね。
「タラサ志摩」当時に私が考案した、地元の海藻「あおさ」を使った「あおさパン」というのがあるのですが、それがとても好評を得て、いまだにそのパン目的でご来店くださるファンの方もいます。海藻類はほかにも、ひじきやあかもくなども焼菓子に使っています。フルーツは、柑橘類、いちご、ブルーベリーとか…あと、伊勢茶も。地元食材を採り入れたお菓子は、うちの個性でもあります。
- パティシエを志した理由は?
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地元の高校から東京の大学に進学したのですが、あるとき、渋谷で行列しているケーキ屋をみつけたんです。都会じゃ当たり前なのかもしれませんけど、この、わざわざ並んで食べるほどの魅力ってすごいな!と思って。もとより大学進学にも明確な目的があったというわけでもなく、どちらかというと、何か「技術」を身につけたい、という気持ちが強かったんです。それで「コレだ!」と思ってしまったんですね。大学をやめて、お菓子の専門学校へ行きました。でも、それまでお菓子作りが趣味なんてことも一切なく。強いていえば、食べるのは好きでしたけど(笑)
お名前といい、お菓子との出会いといい、ますます、運命的な「天職」として、今現在のシェフがあるような気がしてきました!